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熊本の夜はすっかり更け、市街の店が次々と暖簾を下ろす中閑散とした雰囲気が漂い始めた。 熊本市街から清正公の像を横目に坪井川に沿って北上すると、ライトアップされた熊本城城壁が進むべき道を示してくれるかのようであった。 我々が向かうのは、「熊本ラーメン」を語る際に外す事の出来ない、もう一つの老舗である。 「熊本 こむらさき」でも記したように、「熊本ラーメン」のルーツは玉名「三九」とされる。 店主の山中氏が玉名「三九」に衝撃を受け、その味を熊本へ伝えた事は既に触れた通りだが 山中氏が玉名「三九」へ行った際、実は他に同行の連れ合いが二名居た。 それが重光孝治氏と、木村一氏である。 |
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清正公が導く | その道の先に・・・ | 看板には謎のキャラクター |
重光氏は後の世界最大のラーメンチェーン「味千ラーメン」の創業者で 山中氏と同様に玉名「三九」から多大な影響を受け、ここ熊本へその味を伝えた。 台湾出身であった重光は、独特な中華料理の技法を加えた風味の熊本ラーメンを生み出し いまや国内はもとよりアジア各国、北米にまで支店を広げる大ラーメンチェーンへと成長を遂げている。 「熊本ラーメン」の特徴であるニンニクスパイスの発案については、この重光が最初とする意見もある。 木村氏は、玉名「三九」に感銘を受けた後、昭和28年に熊本で「松葉軒」というラーメン店を開業した。 この店こそが熊本最初の「熊本ラーメン店」と言われる伝説の老舗なのであり、 「こむらさき」「味千」「桂花」や「黒亭」など、多くの熊本の著名な店舗の先駆けとして知られる。 玉名「三九」から熊本へ味を伝えた男3人衆の物語は、今もこの地に受け継がれているのだ。 |
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人の家みたい | 玉子麺が良い色合い | さようなら熊本 |
「松葉軒」は熊本市街を少し外れた鹿児島街道沿いの広い車道に面して営業している。 ずいぶん遅い時間に訪問したにも関らず、店の明かりは煌々と道を照らしていた。 店内は少し狭く、調度の印象のせいか所帯じみている。 棚には漫画なども並び、いかにも昭和のラーメン屋さんという趣。 先客は無し、メニューを見ると定食類なども充実している。 初老の店員さんに、らーめん(530円)をオーダーする。 具は、海苔、チャーシュー数枚、キクラゲ、青ネギで、麺は懐かしい黄色がかった玉子麺の中太。 スープは、ハッキリと白濁しており表面にこってりとした油脂分を浮かせる。 ニンニクチップは別途調味料として用意されてはいるが、積極的に入れる雰囲気でもない。 このあたり、いかにも熊本の黎明期の老舗である事を伺わせる。 スープはアッサリ目ながらまろやかなコクのある味わい。 ツルツルとした玉子麺は、コシに欠けるもののどこか懐かしい郷愁を誘う。 昔ながらの素朴さ、とでも言えるだろうか。 満腹のはずなのに、抵抗無く食べ進むことができた。 熊本での最後の一杯を平らげ、最終日はいよいよ九州南部へと向かうことになる。 軽く打ち上げを兼ねてビールで乾杯する際、あてに野菜炒めをオーダーしたのだが これが存外に旨く、箸が止まらない。 腹が膨れていても、身体が野菜を欲している現実に気付き、少し心配になる我々であった。 「松葉軒」 熊本県熊本市中央区妙体寺町5-14 営業時間 11:00〜23:00(ランチ営業) 定休日 不定休 駐車場 有り |
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