<<熊本 「こむらさき 本店」 熊本 「松葉軒」>>




「こむらさき 本店」を出た我々は、次の店へと向かいつつ賑わう夜の熊本市街を散策することにした。
熊本と言えば月並みではあるが、ご当地ゆるキャラの「くまもん」で有名だ。
旅の目的はラーメン史探訪記とはいえ、様々な人間関係のしがらみにより土産の用意は欠かせない。
県民百貨店などを巡りつつ、くまもんグッズを買い漁るのだった。


ちょっと怖い くまもんグッズを漁る 有名らしいカッパ像



さて、熊本豚骨ラーメン発祥の起源としては、
玉名「三九」から直接伝播する「こむらさき」等とは少し別のルートが存在する。


玉名「三九」の繁盛によって玉名で興った豚骨ラーメンブームは、その玉名の地で様々な名店を排出した。
昭和29年に「東洋軒」として創業した豚骨ラーメン店もその一つで、玉名の老舗に数えられる。
玉名「東洋軒」は昭和32年に熊本へと移転し、店名を「こだいこ」と変え熊本へ豚骨ラーメン文化をもたらした。
熊本「こむらさき 本店」の出店には遅れるが、熊本ラーメン発祥の礎を築いた伝説的な存在であることに変わりは無い。
玉名発祥のラーメン店が熊本へ出店したという点で、玉名から熊本への伝播を伝える象徴的な出来事である。



赤ランプが特徴的 先客ゼロ



創業59年となる「こだいこ」は熊本市街を貫く銀杏北通りの市役所近くに店を構える。
雑然とした繁華街の中にある小ぢんまりとした店舗だ。
2010年に移転してこの場所で営業をしているとのことで、老舗らしい古さはさして感じない。
店内は木の温かみを感じる作りで、席次はカウンターやテーブルの交差する独特の配置、階段を上がった二階席もあるようだ。
有名人なども多く訪れるとされ、店内の壁面には所狭しとサインの描かれた色紙が並ぶ。
店内には30代前後と見られる男性の店員1人。アイドルタイムなこともあり他に客も居ない。


電話番号入り丼 腹具合は余裕



「こだいこ」のラーメンは、創業当初より変わらぬ、鉄鍋で豚の頭を3日間煮込んだスープを使用する。
様々なメニューが並ぶ中、我々はこだいこラーメン(650円)をオーダー。
出てきた一杯は、黄色味のかかった白濁スープが特徴的で、具にはチャーシュー二枚と、青ネギ、キクラゲが乗る。

こちらの豚骨100%のスープの味は、熊本ラーメンらしくアッサリとした獣臭の少ないもの。
浮いた油脂分は多いものの癖はなく飲みやすい。
自家製麺という中太ストレート麺でスープとの絡みはイマイチだが、すんなりと胃に落ちていく。
ニンニクチップは卓上の「焼きニンニク」を好みで入れる。焙煎香が強いため入れすぎは禁物だ。

見た目の印象より淡白な一杯だが、これが懐かしみを持って記憶される郷愁の味とされているようだ。
今も変わらず、熊本での創業当時の味を守り続けているという事にも驚かされる。
暖簾わけを一切しないという頑固な職人気質が守り続けてきた一杯だ。

「こだいこ」についても、広範においては久留米「三九」の影響を受けた伝播には違いないが
博多・長浜から、玉名を通じて熊本へ道程を伝えた老舗として、確かに歴史に名を刻んだ。
今日の調理をしてくれた店員さんも未来へその責務を担っていくのだろうか。
そんな思いでふと厨房に目を向けると、テーブルに突っ伏して安らかな寝息を立てる彼の姿があるのだった。




「こだいこ」
熊本県熊本市中央区花畑町10-4
営業時間 11:00〜翌3:00
定休日 不定休
駐車場 無し



<<熊本 「こむらさき 本店」 top 熊本「松葉軒」>>

inserted by FC2 system