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博多最後の夜の締めくくりに相応しい一杯は、中州、天神などに軒を連ねる屋台ラーメン街をおいて他にあるまい。
豚骨ラーメンのルーツを探る意味でも、前項の路面店「長浜ナンバーワン」から、屋台店へ綺麗に繋がる歴史探訪の道程として申し分ない。
屋台街の詳しい説明については前項にて記したのでここでは割愛するが、そこに今も息衝く老舗の萌芽たる屋台の雰囲気を感じ取れる事だろう。

長浜地区から中州へ足を向けた我々は、博多の色街へと入る。
国体道路を進み春吉橋を越えるあたりから、客引きは増加し道路もタクシーで溢れるなど、博多駅周辺の様相から夜の繁華街へと姿を変えていく。
数メートル毎の執拗な呼び込みも屈せず、我々は一路屋台街を目指すのだった。


川面に移る博多の灯 賑わう屋台街 申し分ない



行政指導によって減少の一途を辿る屋台街ではあるが、今もまだ200軒以上が博多川沿い等で営業を続けている。
屋台の全てがラーメン店ではないにせよ、この中からただひとつの店を選ぶとすれば、何処か?
抜群の人気と知名度、そして歴史を兼ね備える「一竜」、「やまちゃん」「屋台おかもと」といった所になろうかと思う。
残念ながらこの日「一竜」は準備中だったため、我々は「やまちゃん」へ向かう事にした。

「やまちゃん」の屋台は、春吉橋を渡ってすぐの博多川沿いにある。
12月の寒風吹きさぶ中、各屋台は半透明のビニールシートで覆われ中の暖をとっているようだ。
「やまちゃん」の屋台は満員だったがすぐに席が空き、テーブルの角席に通される。

今日最後の一杯という事もあり、まずはとりあえずビールとツマミで乾杯をすることにした。
屋台ラーメン店の例に漏れず「やまちゃん」でも酒のアテが豊富に揃っている。
おでんの練り物やダイコン、モツ串などを注文してしばし酒盃を傾けてみると、本日ラーメン6杯連食で満腹のはずの胃も、麺類以外なら意外と受け付ける事に驚く。
まさに別腹とは食後デザートの言い訳などではなく、このような極限状態でのことであろうと身を持って実感したのだった。
そんなわけで酒も回りいい具合に出来上がってきた頃、ようやく目的の「長浜豚骨ラーメン」(600円)を注文する。


これは別腹 飲んだ後はラーメン 博多ラーメンそのもの



提供されたのは、丼の外見からして博多ラーメンに求めたイメージそのもの。
完全に乳化した豚骨スープに、青ネギ、きくらげ、小ぶりのチャーシュー、それに極細麺。
麺を啜ると、長浜特有の低加水のサクサクした食感よりはもう少し加水率の高いものであるようだ。
タマゴ麺のような色合い・風味で、これはこれで悪くない。
しかし、我々の胃の方は限界に近く食べ進めるのにかなりの苦戦を強いられた。
スープ自体はライトな豚骨だが、獣脂のような立ち込める臭いに辟易とする。
バターのような獣脂の風味はラードだろうか?とにかく咽るような脂臭に腹十二分目の我々はノックアウト。
そうでなくても、スープは塩味も不足気味に思えるし、スープも温い。
飲んだ後のシメとしては如何なものか、というところだが空腹時に食すにしても替玉は無いようだ。

路面店より高めな価格設定も含め、既に観光用ラーメンという位置付けだろうか?
港湾労務者の腹を満たすために生み出された屋台のラーメンは、今は形を変え福岡の街を支え彩っている。
ルーツを訪ねる旅にとっては酷な現実だが、時勢の流れと共に不変で居られる店などそうは無いのだろうか・・・
満腹にも関わらず訪店した挙句、あれこれ言う身勝手な酔っ払い達であった。

屋台を出た我々は、胃を満たす質量に四苦八苦しながら宿へ帰る橋を渡る。
博多の屋台の灯は博多川へ写り滲んで見えた。




「やまちゃん」
福岡市博多区中洲1 中洲清流公園そば、春吉橋付近
営業時間 17:30〜25:00
定休日 日曜日
駐車場無し




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