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小倉を後にした我々は来た道を戻り、いよいよ豚骨ラーメンの本場と言える福岡は博多エリアへと入った。
この日は福岡に宿泊し、博多、長浜エリアの老舗を巡ることにする。

博多と言えば、白濁豚骨ラーメン発祥とされる候補地の一つであるが、まず来訪したい店は白濁豚骨のラーメン店ではない。
白濁豚骨スープが生まれる以前の、いわば本来の「博多ラーメン」を今も提供する老舗である。
博多において初のラーメン店は、昭和16年ごろに開業した「三馬路(さんまろ)」で、当時の豚骨スープは白濁せず澄んでいた。
後に、博多「赤のれん」により福岡での白濁スープが生み出される以前までは、「博多ラーメン」と言えばこのような豚骨清湯スープを指した。
水と豚骨、若干の臭み抜きのためのショウガ・ニンニクを加えるのみに留めた、純粋豚骨と銘打たれるそれである。
「三馬路」の味は現在では博多「うま馬」に引き継がれ、福岡本店のみならず東京渋谷ヒカリエ等でもその味を知る事ができる。

我々は福岡でしか味わえない一杯を求め、この種の「博多ラーメン」と言えば必ず名の挙がる老舗、「トキハラーメン」を訪れることにした。

「トキハラーメン」が店を構える場所は、地下鉄天神駅近くの路地裏、水鏡天満宮横丁の雑多な飲食店が軒を連ねる一角である。
すっかり日も落ちネオン看板の目立つ路地裏は、水鏡天満宮側の朱塗り透塀が醸し出す雰囲気と相まって、何か時代を超えた物語のワンシーンに足を踏み入れたかのような錯覚をさせる。
「トキハラーメン」店前には「源流」と大きく掲げられた垂れ幕があり、純粋豚骨であることを謳う個性的な看板などが立て掛けられている。


怪しげな路地裏 狭すぎて正面から撮れず 純粋トンコツ



店内は老舗系らしく雑然とした作りだが、木製建具等の温かみを感じる内装色。
メニューを一通り見ると、ビール・焼酎などの酒類や、あてとしてのツマミ類が充実しており、半ば飲み屋の様相を呈している。
メニュー全体として値段が安く、我々が注文したラーメンも500円と安価である。

ラーメンの具材は、ネギ、チャーシュー、キクラゲとシンプル。スープは半ば透き通っており無化調であるらしい。
まず一口して思うのは、かなり薄味であるということ。
豚骨のみで炊いたとされるスープはあっさりしており、他方臭みやエグみなどとは無縁で塩分濃度も低い。
日ごろ濃い味の料理に慣れ親しんだ舌には少し物足りなく思うが、店内の表示にも健康志向であるようなことも書かれているので、そうした方向性として捉えればこれはこれで一つの見識ではあろう。
塩分濃度の低さも、着座の際に出された辛子高菜と共に食す分には程よい。
麺は極細で注文時にカタさを聞かれる。今回は普通で頼んだが、ヤワすぎるように思えた。
スープが淡白な分、絡みの良い低加水細麺との相性は悪くない。卓上調味料で味の変化を楽しみながらスルスルと完食してしまった。

「トキハラーメン」は、乳化豚骨以前の黎明期の福岡ラーメンであるが、このスープがそのまま白濁するまで煮込まれれば、我々も良く知るオーソドックスな豚骨ラーメンになり得るという点で、確かに豚骨ラーメン史に繋がる色濃い一杯であった事は疑いの余地は無い。
いよいよ核心に迫りつつある福岡でのルーツ探訪に弾みをつけた我々は、誘惑多いネオン輝く博多の夜街へと歩を進めるのだった。




「トキハラーメン」
福岡県福岡市中央区天神1丁目15-3
092-714-5137
営業時間 10:30〜22:00(L.O.21:30)
       10:30〜18:00(L.O.17:30)
定休日 第3土曜日
駐車場無し




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