<<久留米 「南京千両 本家」 玉名 「大輪」>>




「南京千両 本家」では、九州豚骨ラーメンに連なる最古のルーツに触れることが出来た。
「ちゃんぽん」に始まり、乳化豚骨の開祖とされる久留米「三九」=小倉「来々軒」まで至る歴史の道程が繋がったのである。

久留米は、豚骨ラーメン史を語る上で外せない多くの老舗を抱える土地柄にも関わらず
実のところ、豚骨ラーメンの本場・開祖として全国的に認知され始めたのは割と最近のことだ。
一方の博多ラーメンは、「なんでんかんでん」を筆頭に1980年代の終わりから東京に相次ぎ出店し首都圏を中心とした豚骨ラーメンブームの火付け役となった。
これが現在に至るまでの豚骨ラーメン=博多というイメージを全国に根付かせた一因と考えられる。

こうした動きに遅れをとった久留米ラーメンではあるが、近年は久留米こそ豚骨ラーメンの本場、開祖であるという説も説得力を持って語られるまでになった。
その大きな原動力となった老舗こそ、誰知る久留米の雄「大砲ラーメン」である。

昭和28年、久留米市明治通りに一軒のラーメン屋台「大砲ラーメン」を興した創業者の香月昇は、昭和42年から屋台を店舗に切り替えたことを契機に次々と事業展開を図っていく。
平成に入ってからは店舗のフランチャイズ化を進め各地イベント等への出店を相次ぐ一方で、久留米、九州におけるラーメン振興に関わる活動にも積極的に関与、久留米ラーメンの存在感を徐々に増していくと共に、その先頭に立つ老舗として「大砲ラーメン」の名を広めたのだった。
最近では「新横浜ラーメン博物館」への出店が記憶に新しいが、歴史ある老舗であるだけでなくまさに久留米ラーメンの伝道師的存在の名店といえる。

久留米には、そんな「大砲ラーメン」の原点、ルーツとなる伝説的な老舗が存在する。

久留米「清陽軒」である。


トラック邪魔 とりあえず座ってみる ファミレス並



「清陽軒」は昭和27年に、前述の香月昇とその兄の香月浩によって創業した屋台で、当時から大繁盛の有名店であった。
久留米のラーメン店として、「三九」との具体的な接点については不明だが、時系列からしてある程度影響は受けていると考えて良いだろう。
やがて創業者の一人である香月昇は所帯を持つことを契機に昭和28年に独立し、新しく屋台を構えることになる。
それが「大砲ラーメン」なのである。

香月浩の「清陽軒」はその後も長く繁盛を続けるが、代変わりをきっかけに時流に上手く乗れず、平成18年に姿を消してしまった。
しかしその後、常連客を始めとする多くの閉店を惜しむ声から有志の「清陽軒復活プロジェクト」が発足、「大砲ラーメン」二代目社長らの支援等もあり、遂に平成21年に新生「清陽軒」として復活を果たした。
現在は再び「清陽軒」二代目の手により、かつてと同じ場所で営業を続けている。

復活した「清陽軒」の店舗は、当時の屋台があった第一勧業銀行(現みずほ銀行)前を模した建物となっており、建物の入り口は屋台風の設えとなっている。
暖簾をくぐると、店内ドアの前には当時の屋台のセットが置かれており、この新しい建物の中で往時の雰囲気を偲ばせる。
店内は広く開放的で、真新しく今風のフランチャイズ系飲食店のような印象だ。
昼時にはまだ早く、先客はまばらである。



「カリカリ」は左下 ずぞー



テーブル席に案内されメニューに目を通してみると、創業来の味を守る「屋台仕込みラーメン」と、そこからラードを抜いた「すっぴんラーメン」の2本立てであるようだ。
誰もが入りやすい店内と併せて、子供や年配の方、女性にも食べやすいあっさりとした味も用意する配慮が心憎い。
我々は創業時の味を求め「屋台仕込みラーメン」(500円)を注文する。

到着したのは、程よく乳化した馴染み深い豚骨ラーメンそのもの。
具としては、チャシューにキクラゲ、沢山の青ネギに海苔、そして久留米ラーメンならではの「カリカリ」と呼ばれる揚げた背脂が乗る。
スープは、豚頭だけを3日間かけて煮込む豚骨100%。
十分なコクとあっさりした後味が特徴で、誰にでも馴染みやすい調味に仕上がっている。
麺は久留米としては細目のサクサクとした触感の低加水麺で、スープとの絡みも良い。
「カリカリ」は少々の癖がありながらも、香ばしい風味が単調になりがちな豚骨スープに好ましいアクセントを加える存在となっている。
総じて、安心して万人にお勧めできる質の高い一杯と言える。

伝説的な老舗の味が近代の多彩なラーメンに慣れた今の我々の舌に合う事もちょっとした驚きをもって喜ぶべきことだが、何よりも一度は閉店した老舗を復活させ得たこの地の人々のラーメンに対する飽くなき熱意こそが印象深い。
久留米には、まだこうして地域の人々に愛される名店が数多くあるのだろうが、スケジュールの都合でこの地を後にしなければならない我々は、後ろ髪を引かれる思いで車に乗り込むのだった。





「清陽軒」
福岡県久留米市諏訪野町1798-6
営業時間 11:00〜22:00
定休日 第三火曜
駐車場有り




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