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「赤のれん」を出た我々は、福岡ラーメン店の集結する長浜エリアへと足を運んだ。 目的は、博多ラーメンとしておなじみの「替え玉」発祥の店といわれる「元祖長浜屋」である。 今更の説明の要も無いことであろうが、「替え玉」とは汁を残して完食したラーメンに麺だけを追加注文する事である。 「元祖長浜屋」においては、かつて常連の一人がおかわりとして麺だけを店主に注文した事から始まり、やがて他店がそれを真似る事でこの地に広く普及した。 この「替え玉」システムと、長浜の港湾労務者向けに手早く茹で上げられる加水率の低い極細麺を使う点は、九州でも博多ラーメンにのみ見られる大きな特徴である。 「元祖長浜屋」は昭和27年の創業、元々は博多区築地本町の魚市場の周辺にあったいわゆる「市場ラーメン」で魚市場が移転するのに伴って現在のエリアに移った。 実際に「元祖長浜屋」へ向かうと、近所に似たような屋号の店が多いことに驚かされることになる。 これは、数年前のお家騒動に起因する分裂によるものであるそうで、その内実はハッキリとしないが運営方針の違いなどによる内部抗争により、平成21年に従業員の一部が「元祖長浜屋」の近所に「元祖長浜ラーメン家(け)」をオープン、さらに平成22年、その従業員の一部が近所に「元祖長浜家(け)」をオープンさせる。 同年には、「元祖長浜屋台」が数十メートルも離れてない位置で開業、地鶏料理店を母体とする無関係の店舗だが、上記三店舗に屋号を使用する許可を得ての事であるという。 「元祖ラーメン長浜家」と「元祖長浜家」の間では店名を巡る裁判沙汰の争いも起こっており、穏やかではない。 老舗の味を訪ねに来た観光客にとってはなんとも迷惑な話だが、昭和27年創業の味を受け継ぐのは「元祖長浜屋」の屋号を掲げる店ということで概ね一致を見ているようで、地元の人やタクシー運転手などに美味しい店を尋ねても紹介されるのは、まずこの店である。 店舗自体は、当初支店として作られた比較的新しい建物で老舗の味わいとは無縁、店内は広く明るいが、壁に隣せず中央に配置された数個のテーブルを囲むように席が配置されているのが、なんとも独特に思える。 「元祖長浜屋」は、店内に入った瞬間にオーダーが発生するためこの時に麺の固さなどの好みを申告する必要がある、とのことで少し身構えたが、現在は店外に食券機があり普通の感覚でオーダーできるようになったようだ。 我々はラーメン(400円)を注文、特に好みの申告も無しで7割方客で埋まった店内の席へ着座する。 卓には箸や茶碗等、紅ショウガ、ゴマの他に、タレや出汁の入った容器が有る。「替え玉」でスープが薄くなる長浜ラーメンにはおなじみの調味料である。 |
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そこらじゅう元祖だらけ | 店員さんはヤンチャ風 | 今はしんどい麺多め |
しばらくして到着したラーメンは、多目のネギが目を引く個性的な一杯。 「肉」と呼ばれる細切れのチャーシューが乗り、スープは半透明であっさりとした印象を受ける。麺は極細で、結構な量を奢っているようだ。 スープを一口した印象は、淡白で薄い。スープは、豚のアバラやゲンコツを12時間ほど煮込むそうだが、はて・・・ 麺と一緒に口にした際の印象もさして変らない。粉っぽいボソボソした麺との相性も良いとは思えない。食べ進むうちにネギや肉と一緒に口に入れるとそれなりに良い塩梅となることに気付いた。 周囲を見渡しても、そうした食べ方をされているお客は多く、これがこの店の流儀なのであろう。 紅ショウガとゴマ、少々のタレを加えると、大分食べ安い味へ変えていくことも出来る。 それにしても、とにかく麺量が多い。400円でこのボリュームとは驚くばかりである。 本日5杯目ともなるとこの量が痛し痒し、なんとか完食して箸を置いた。 様々な意見を聞くにつけ、このラーメンは地域のソウルフードであると同時に、ラーメン以前の「元祖長浜屋」という食べ物であるという事。 味について多様な感想がある中で、間違いなく言えるのは中毒性のある習慣食としての人気を博している点。 今にして思えば、この時点では胃袋の具合も手伝い首を傾げながら食べたこのラーメンも、何故かもう一度食べて見たくなる不思議な魅力に溢れていた。 一度のみならず二度三度通う事で初めて癖になっていく、そんな料理も確かに存在する。 ここ「元祖長浜屋」ではそのようにして、この地で愛され続ける老舗として揺ぎ無い地位を築いたのだろう。 いつか再び訪れることがあれば、我々もそうした店と客の関係に染まれるよう願ってやまない。 「替え玉」発祥店を訪ねておいて「替え玉」をしてないことに我々が気づくのは、少し後になってからであった。 「元祖長浜屋」 福岡県福岡市中央区長浜2-5-38 092-711-8154 営業時間 4:00〜翌1:45頃 定休日 年末年始に1週間ほど休業 駐車場無し |
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